2013年5月16日木曜日

読書会 2013/5月

 ワイルドベリーの季節です


 課題本は、「強力伝・孤島」新田次郎

 6つの短編小説でしたが、時間がなくて私の読んだのは「強力伝」のみです。
後の5編も大変興味深いので、明日の時間つぶしに楽しみにとっておきます。

 
 新田次郎さんの小説で一貫しているのは緻密な取材に基づいたお話であるという事だそうです。
 「強力伝」は、短いお話ですが、すぐにぐーっと、引き込まれました。
新田さんご自身が富士山の観測所にお勤めだったという事もあってか、山の気象や登山のことをよくご存知だなあと感心しましたが、なんと彼は実際に登山の経験がないそうで、この小説は主人公の強力である実在された方の日記を基に書き下ろされたようです。もちろん、富士山の強力ですから作者である新田さんもご存知の方だそうです。

 物語は強力(山に荷を担ぎ上げる人であった小宮(小見山正氏)さんのプロとしての誇り高い命をかけた大仕事に対する凛とした姿勢を誠実な人柄や娘を思う父としての姿などを交えて描写しています。
男であれ女であれ仕事に対するプロとしての欲望や向上心を満たすために命までもかけてしまう。家族にとってはたまったものじゃないですが・・・それだけ、仕事にたいして自信と誇りがあったのでしょう。
「富士山一の強力」が誰も引き受け手のなかったこの仕事を、自分の名誉に掛けて、それまで縁のなかった白馬岳の頂上まで50貫(約188kg)の石を担いで悪天候の中、大雪渓を登ったのですから。
物語そのものも面白いですが、登山といかないまでも、山歩きを趣味とする私にもたくさんの登山の醍醐味を教えてくれました。
特に、白馬岳は夏山も冬山もいろいろなじみが深いのでたいへん興味深く読ませていただきました。
 後で知りましたが、直木賞受賞作だそうです。

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