もちろん私よりはるかに大きい犬が,近寄っていくと小さな私の肩に前足を乗っけて,それはそれは優しくしてくれるんです。
でも,それは小さい私にとっては恐怖と信頼の混ざったなんとも複雑な思いでした。
彼は飼っていた猫とも一緒にご飯を食べるようなやさしい犬でした。
犬も私も成長して,通りかかる近所の方に吠えるのは彼の仕事だと思ってたのだけど・・・
ご近所に犬が大嫌いなおばあちゃんがいて,時々通りかかりにペコと呼んでいたその犬を威圧してさらに大きな声で吠えさせようとするのを何度も目撃していました。
もちろん彼は繋がれているので一歩も敷地外に出ることはなかったのですが,ある時そのおばあさんが,うちの犬に噛まれたと苦情を訴えてきました。
田舎のことです。人を噛んだ犬は処分するのが慣例だったようです。
私は何も知らされず,母から,ペコはおばあちゃんを噛んでしまったからもうこの家にはいられないこと,やさしい山の方にいるおじさんがペコをもらってくれるからつれていこう。と,説得されました。母と一緒に長いこと歩いて山の中腹のそのおじさんのところへペコを連れて行きました。私は何度も「大事にしてね。可愛がってね。」とおじさんに頼んだら,おじさんは何も言わずに微笑んでくれました。
次の日もその次の日も私はおじさんを尋ねましたが,もうそこにおじさんはいませんでした。
ある日,おじさんが小屋から出てこられて,もう別のところにもらわれて行ったよ。と,話してくれました。
泣いて泣いて辛かったけれど,優しい人に引き取られたのならと思うことにしました。
何年も後に,私はペコが殺処分されたことを悟りました。
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